徘徊の旅の中で巡り合った名所や史跡などの「場所」を文書と写真と地図を使って保存するブログ

唐長



唐長(からちょう) 2008/05/14訪問

Overview

This article chronicles a visit to the Kyoto Karakami (woodblock-printed paper) atelier “Karacho” at the cocon KARASUMA building on May 14, 2008. The venue itself is a masterpiece of renovation by architect Kengo Kuma, featuring the traditional “Tenpyo Oogumo” (Great Clouds of Tenpyo) pattern on its glass facade. As the only Karakami maker in Kyoto continuing since the 17th century, Karacho preserves approximately 600 historic woodblocks. The author describes the artisanal process of rubbing pigment onto washi paper using only the palm of the hand to create a soft, lustrous texture that shimmers elegantly under candlelight. By reflecting on how these ancient patterns are now applied to modern lighting, tableware, and interior design, the text explores the essence of design and the enduring power of historical content in the contemporary world.

概要

本稿は2008年5月14日、京都・四条烏丸に位置する京唐紙の老舗「唐長(からちょう)」のショップを訪れた際の記録です。舞台となる「cocon烏丸」は、建築家・隈研吾氏が昭和初期のビルをリノベーションした建物であり、そのファサードには唐長伝統の「天平大雲(てんぴょうおおぐも)」が大胆にあしらわれています。17世紀から唯一途絶えることなく続く唐紙屋としての歴史、約600枚に及ぶ伝来の板木、そして手のひらで文様を写し取る独特の技法について詳述。桂離宮や寺院の襖を彩ってきた伝統美を、現代のライフスタイル(小物や食器、建築デザイン)へと昇華させた、コンテンツとしての強みとデザインの本質を鋭く考察しています。

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唐長 ポストカード

 妙心寺の北総門の前にある妙心寺北門前停留所から市バス26号に乗車し、四条烏丸へ向かう。一条通を東に進み、馬代一条で南に折れる。市立大将軍小学校と京都府立医大の間を再び東に進むと西大路通に出る。西大路通を右折して四条通まで南下する。四条通を東に進み、四条烏丸で市バスを下車する。妙心寺を出たのが16時前だったので、およそ30分で四条烏丸についたこととなる。

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唐長 説明書
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唐長

 四条烏丸の交差点の東南角に複合商業施設cocon烏丸がある。昭和13年(1938)に京都のオフィス街の中心地に丸紅京都支店ビルが建設された。第二次世界大戦後では戦火を免れ無傷のままであったことから、戦後は進駐軍に接収されている。平成16年(2004)、建築家の隈研吾によってリノベーションされたのがcocon烏丸である。低層部には新たな緑色のガラススクリーンを設け、商業施設の賑わいを演出している。このファサードに描かれている文様は江戸初期から続く京唐紙の老舗「唐長」に伝わる古典文様の天平大雲である。建物の名称をcocoon=繭と見誤っていたが、正確にはcoconであり、古今東西のココンから名づけられている。この建物は平成18年度第16回BELCA賞ベストリフォーム部門を受賞している。
 この建物のファサードの文様に使われた唐長の店舗がcocon烏丸の1階に入っている。唐長は17世紀半ばに創業した京唐紙を製作しているお店で、京都市左京区修学院離宮の近くの閑静な住宅街の中に工房を持っている。1792年を最古とする板木が約六百枚あり、多くの戦火をくぐりぬけて受け継がれている。唐紙の起源は平安時代に遡る。中国から伝わり詩歌を書き記す紙として使われていた。その後日本でも作られ始め、室町時代には現在の技法が確立されたといわれている。時代が下って襖紙に用いられるようになり、桂離宮や寺院、茶室などに使われてきた。先日放映された桂離宮の番組でも、離宮の修復に唐長の唐紙を使用していた。
 唐紙は版画と同じように、文様が彫られた板木に顔料をのせ、和紙で写しとることで出来上がる。あらかじめ和紙への着色を行ったり、顔料として使われる雲母(きら)や胡粉の調合加減を変えたり、数多くの文様の板木を組み合わせることにより、無限に近い表現が可能となる。また普通の版画で使われるバレンは使用しない。手のひらでこすって文様を写しとることで和紙の表情がさらに柔らかくなる。雲母を顔料に入れることにより、蠟燭などの揺らめきのある灯火の下では真珠のような落ち着いた上品なきらめきを放つ。これは昼間に感じた淡い文様の印象とは全く異なり、より鮮明に文様が浮かび上がる。
 江戸時代に入ると唐紙の全盛期が訪れる。京都には十三軒の唐紙屋があったと記録に残っている。しかし明治にはそのほとんどが廃業に追い込まれ、現在でも江戸時代から続く唐紙屋は唐長一軒だけとなっている。

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唐長 実物は見る角度で輝きが異なる
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唐長 この画像では華やかさが表現されていない
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唐長 本物の持つ奥深さにはかなわない

 現在、唐長では襖、壁紙、屏風だけでなく、ポストカードや照明器具のシェードに唐紙を用いた唐紙小物、さらには伝統的な文様を使用した食器まで製造している。どの文様にしても描く対象を非常に簡潔に表現しているためモダンな印象を見るものに与える。だからこそランプシェードや食器に使用できるのだと思う。まさに三百五十年間以上かけて作り上げた文様や板木というコンテンツを大事に育て上げてきたことによって成立している製品とも言える。当然、そこには昔から伝えられてきた技法を継承し、現在でも同じものを再現できるだけの技術力もある。しかし技術だけでは見る人を感嘆させても、共感させることはない。そのあたりがコンテンツの重要性でありデザインの本質でもある。

「唐長」 の地図





唐長 のMarker List

No.名称所在地緯度経度
 唐長 京都市下京区烏丸通四条下る水銀屋町620 35.0032 135.7594
    

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