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柊家 その2



柊家(ひいらぎや)その2 2008/05/13訪問

Overview

This article provides an in-depth architectural review of Room 32 in the old wing of “Hiiragiya,” visited on May 13, 2008. The author analyzes the guest room through the lens of a “tea room” metaphor, detailing the exquisite Sukiya-style craftsmanship found from the entrance foyer to the six-tatami main room. The narrative explores the diverse ceiling structures—incorporating bamboo poles, wickerwork (ajiro), and recessed lighting—and the clever use of “Yukimi-shoji” (snow-viewing screens) to integrate the small courtyard garden. By examining decorative elements like scratch tiles and the unified branding of the holly (hiiragi) emblem, the text illustrates how the inn creates a sense of profound depth and “wabi-sabi” elegance within a compact urban space, effectively masking the bustle of the adjacent Fuyacho Street.

概要

本稿は2008年5月13日、京都の名旅館「柊家」の旧館「三十二号室」に宿泊した際の詳細な客室探訪記です。麩屋町通に面したこの部屋を「茶室に見立てた空間」と捉え、踏込みから次の間、そして六畳の主室に至るまで、数寄屋建築の粋を凝らした意匠を建築的視点で分析しています。スクラッチタイルを用いた踏込み、竹の竿縁や網代(あじろ)を組み合わせた複雑な天井構成、雪見障子の先に広がる坪庭の視覚効果など、限られた空間の中に奥行きと情緒を生み出す職人の技を詳述。また、ブランドロゴの統一性によるデザイン戦略にも言及し、伝統の中に息づく洗練された美学を解き明かしています。

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柊家 32号室

 今回柊家で宿泊した部屋は、鍵に書かれた名称によると三十二号室とある。麩屋町通から西方向へ玄関を入り、「来者如歸」の額のかかる間に上がる。そこから北側に伸びる廊下の右手側の部屋であったので、部屋の窓先は麩屋町通に面した塀となる。

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柊家 客室玄関 この部分は比較的新しい造りとなっている
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柊家 客室玄関 棚と冷蔵庫
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柊家 客室玄関 冷蔵庫置き場 ミニチュアボトルと腰壁のスクラッチタイルに時代を感じる
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柊家 客室玄関 冷蔵庫の上にはワインオープナーまで用意されている
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柊家 客室扉

 板張りの廊下から部屋の開き戸を開けると踏込みとなっている。正面に棚が架けられ、その上に一輪挿しが置かれている。棚の右手上には灯りと開けることのできない装飾として拵えられた窓が付けられている。棚の下には冷蔵庫が置かれ、その上には消毒済みのワイングラスや栓抜きなどが入れられた籠と懐かしい洋酒のミニチュアボトルが置かれている。この部分の腰壁にはスクラッチタイルが貼られているため、華やかさを感じる。床は廊下と同じように使い込まれた板敷き、天井は角材の竿縁天井となっている。踏込みの左手は引き戸になっており、次の間につながる。

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柊家 次の間から客室扉を眺める
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柊家 次の間 正面にクローク 左に帽子掛け

[[ fig.009 ](https://vinformation.net/Images/2008/20080513_IMG_C8037L.jpg)(https://vinformation.net/Images/2008/20080513_IMG_C8037S.jpg)]

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柊家 次の間 帽子掛けの意匠
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柊家 次の間
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柊家 次の間 布団入れ
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柊家 次の間 竹の竿縁天井と灯り
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柊家 次の間
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柊家 赤い道具箱と鉄瓶

 次の間の左手側にも開けることのできない窓が設けられている。その上には帽子掛けのようになっているが、この帽子掛けの左端を押さえるように天井から一本の竹の見切り縁が下りてくる。それほど広くはない壁面ではあるが単調にならないようにしている。正面には2つの収納があり、左はクローク、右は寝具入れで、どちらも開き戸となっている。踏込みとの間の引き戸の懐には給茶用の赤い道具箱と確認はしなかったが火鉢のような加熱器の上に鉄瓶が置かれている。天井は竹の竿縁天井であるため、踏込の天井より柔らかさを感じる。照明は天井裏の懐に付けられ、天窓のように見せかけている。次の間は二畳ほどの狭い部屋であるが、主室との間の欄間や天井そして照明などに意匠が凝らされている。

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柊家 主室
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柊家 主室 雪見障子になっている
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柊家 主室 床の間の上部の壁が二重になっていることが分かる
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柊家 主室から次の間を眺める 床の間とテレビの置かれた床脇が一体化している
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柊家 床の間
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柊家 床の間に活けられたお花
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柊家 床の間に置かれた香炉
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柊家 床の間を横から眺める

 主室は六畳間で、座卓に座椅子と共に置かれた白い布カバーに覆われた大きな脇息がまず目に留まる。主室の正面は障子が入り、その先には応接セットが置かれている。主室の障子は上に上げると外が見える雪見障子になっている。主室から直接庭にはつながっていないが、そのような雰囲気を感じられるように設えていると考えるべきだろう。
 床の間は主室の右手奥に設けられている。畳敷きの床の間には掛け軸が掛けられ、香炉が置かれている。香炉の左には備前焼のように見える花器にお花が生けられている。床の左には障子が入れられている。この裏側は洗面台となっているため、これも意匠的なものである。床の右側には棚があり、現在は液晶テレビが載せられている。この棚には文箱が置かれているので、昔は文机として使われていたと思われる。天井に近い部分を見れば、床の間とこの棚は一体として作られていることが分かる。この部分は床脇の棚というよりは書院的な扱いとなっている。

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柊家 主室 床の間と対面する壁 間柱の位置に垂れ壁がある

 主室の左側には障子が付けられている。次の間の帽子掛けと同様に竹の押し縁を加え、単調な壁にならない配慮がなされている。

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柊家 主室天井の構成 左側に垂れ壁が見える
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柊家 主室天井の構成 上は竹の竿縁 下は網代 照明の位置には板が渡されている

 この主室の天井も複雑な構成となっている。窓側から畳一枚分内側に垂れ壁が作られている。窓側は竹の竿縁天井となっているが、さらに細い竹を横は二本、縦は一本で格子状に組み、窓側に向けて勾配を掛けている。これ以外の部分は網代天井となっている。中央部に板を渡し、長方形の照明器具を釣っている。垂れ壁のため照明器具のない窓際が暗くならないように、垂れ壁に穴を穿いている。

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柊家 窓際に置かれた応接セット 奥の引き戸は洗面所につながる
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柊家 絨毯には柊の印
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柊家 直線的なデザインの洋家具は和室にも合う
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柊家 主室との間の欄間 主室側は長方形の障子 窓側は緩やかな円弧
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柊家 小舞の竿縁天井 間隔は主室側に合わしている
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柊家 天井詳細 美しい垂木は北山杉か?

 窓先の床には柊家の印が入った絨毯を敷いている。部屋の鍵、荷物のタグ、手拭などあらゆる場所にこの印を見ることが出来る。このようなデザインの統一はそれ程昔からのことではないと思われるが、ブランドイメージの確立という観点では重要なことと思う。複数のマークやキャラクターを混在させると印象が薄くなり、ひいては認知度も下がっていく。デザイン戦略として重要なポイントでもある。
 この部分の天井も凝ったつくりとなっている。杉の磨垂木と思われる竿縁天井に次の間と同じく掘り込み照明が付けられている。およそ六十センチ間隔の竿縁だけでは間が抜けてしまうため、削いで作られた竹が装飾的に入れられている。天井は裏板に張られた竹小舞のように見える。平天井ではあるが、この部分は軒庇に見立てている。

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柊家 坪庭 麩屋町通沿いの塀の内側
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柊家 坪庭 手水鉢が置かれている

 窓の外はすぐに塀が建ち、その先は麩屋町通となっている。坪庭には柄杓の置かれた手水鉢、釣り灯籠、石灯籠そして塀の内側には葦簀が釣られている。この葦簀を下げることにより壁の向こう側にも客間が続いている印象を与え、壁の裏側に通りがあることを忘れさせている。また狭い坪庭に僅かながらの奥行きを与える効果も担っている。坪庭の右手には外へとつながる木戸が見える。これは火事になった際の避難通路としても使われるのであろう。
 この部屋は茶室に見立てて作られているということを女将から教えていただいたが、次の間の意匠や主室の天井、塀に設けられた木戸を中門と見なすとこの説明が良く分かる。

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柊家 坪庭 右手に木戸が見える この庭は茶室への露地の役割も持っている

「柊家 その2」 の地図





柊家 その2 のMarker List

No.名称所在地緯度経度
 柊家 京都市中京区麸屋町姉小路上る中白山町27735.0102 135.7655
    

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