柊家 その4
柊家(ひいらぎや)その4 2008/05/13訪問
Overview
This final installment of the Hiiragiya chronicle, dated May 13, 2008, focuses on the culinary experiences and a visit to the new wing. The stay began with matcha and a ginger-scented confection called “Oborozuki,” custom-made with the inn’s holly emblem. The author details a dinner that balanced traditional kaiseki with modern palates, and a breakfast featuring yudofu served in a specialized wooden tub—likely a masterpiece by the renowned cooperage Tarugen—which keeps the tofu and sauce warm with a single charcoal ember. A guided tour of the new wing revealed spacious rooms with beds, highlighting the inn’s commitment to accommodating diverse needs. The narrative concludes with a reflection on the courage required for a historic establishment to embrace innovation while maintaining its legendary hospitality.
概要
本稿は2008年5月13日、京都の名旅館「柊家」での滞在を締めくくる食事と、新館見学の記録です。到着時の抹茶と、柊の印が刻まれた特注菓子「朧月」に始まるもてなし、伝統と現代性が調和した懐石料理の夕食、そして老舗「たる源」製と思われる湯豆腐桶を用いた情緒溢れる朝食まで、五感で味わう京の宿の魅力を詳述。また、仲居さんの案内による新館見学を通じて、古い街並みの中で新たな価値を創造する困難さと、伝統を守りつつもベッドの導入や新システムの試行など「新しいものを受け入れる勇気」を持ち続ける老舗の姿勢に深い感銘を受けています。
部屋に入るとすぐに抹茶が用意される。三日月を模した薄茶の皮に白い斑の砂糖をまぶした菓子はその名のとおり朧月である。中は粒餡であった。一口ふくむとほのかに生姜の香りがしてくる。こちらも柊の印が入っているので柊家が特注した菓子であることが分かる。こちらは加賀屋清和で考案されたお菓子であるが、今はお店は閉められていて購入することは出来ないようだ。このあたりの経緯は、「fran」さんのブログ「まねきねこ」に詳しく記されている。掲載されている写真から、お味も伝わってくると思う。
夕食は非常に美味しく、かつ楽しい一時となった。旅館での宿泊経験が少ないため、他と比べてということでは表現できないが、伝統的な懐石料理は守りつつ現代人の好みも取り入れた料理に仕上がっているように感じた。ある程度の食べ応えのあるボリュームは、外国からのお客様も多いためなのかも知れない。しかし、もう若くはない夫婦でも決して食べ残すほどではなく、食後は満足感が広がるものであった。
朝食もこれから旅に出かける者にとって、丁度よいボリュームである。湯豆腐は湯豆腐桶に入って出てくる。取手の付いた丸桶であり、左側に炭を入れる銅壺とつけ汁の入った汁差しを収めている。銅壺に炭を入れると桶内に満たされた湯が沸き、右側の湯の中に浮かぶ豆腐だけではなく左側に入れた汁差しも同時に温まる仕組みになっている。右側の蓋は風呂の蓋を模しており、蓋を開けるとすでに食べ頃の湯豆腐が美味しそうに浮かんでいる。この湯豆腐桶も確認できなかったが、「こだわりの時間」にかつて掲載していた湯豆腐桶の写真(旧リンク:http://www.toiawase.jp/kodatoki/file03/index03.html)を見る限り、桶の老舗・たる源のものであると思われる。
朝食の後で中居さんに新館の話しを伺うと、快く案内してくれた。拝見したお部屋にはベットがあったが、おそらく新館の洋室は旧館の和室より広めの間取りとなっているようだ。部屋運びの懐石料理を頂くのは旧館と同じだが、布団に慣れないお客様のためにベットを提供するのも現在の旅館の魅力の一つなのかもしれない。このような京都の古い建物の多く残る街中に、新たな旅館を建設するのは極めて困難を伴ったようだ。当初の工程よりかなり完成が遅れたという話しを伺い納得した。ただ単に施工の難しい場所というだけではなく、あらゆる調度品を一つ一つ品定めをしながら客間を創り上げていく作業には当然意に沿わない出来上がりに対して作り直しも生じてくる。また新しい機器やシステムも試行を伴っての導入となる。それらを含めての新鑑建設であるので通常より時間と経費を費やすことになる。これだけ有名な老舗旅館にとっても、新しいものを受け入れる勇気はいつでも必要だということを思い知らされた。
後日、御礼状が送られてくるなど、旅館のおもてなしというものがどういうものか、ほんの一部であろうが垣間見えたような気がする。是非また訪問したいという気持ちにさせるものがここにはある。




















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